老舗 乾佛具店

三代目会長インタビュー

誠実・正確・確認の社訓が70有余年の信頼を築く

インタビュアー
本日は高知市の乾佛具店さんにお邪魔しております。
こちらは70有余年の歴史を誇る老舗と伺っておりますが。
会長
大正10年に私の祖父が創業し、以来、父、私と3代この高知で仏壇仏具の販売に従事してまいりました。私は昭和45年から仕事に就いておりますが、それから3年後の48年、法人化の実現に至ったという次第でして。
インタビュアー
そうしますと、社長ご自身、家業を継がれてすでに20年以上になられると。
会長
ええ、19歳から携わっておりますからね。当時はもちろん、父が社長を務めておりましたが、父は若いころ、日本郵船の社員として海外勤務の経験がございましたことから、進取の精神に富んでいる人で私も色々と影響を受けました。

61年、社長のポストを私に譲りました後も、会長として助言をしてくれておりましたが、2年前、83歳で他界いたしまして・・・。

インタビュアー
そうでしたか。ご家族、従業員の皆さんの悲しみはいかばかりかとお察し致しますが、お父様が築かれた経営理念は、社長がしっかり守り続けていらっしゃるのでしょう。
会長
ええ。私はもちろん、父の”誠実・正確・確認”というモットーは、社訓として今も全従業員の中に息付いております。仏壇仏具は人の心を反映するお品物ですので、特に”誠実”を心掛けることは言うまでもありませんが、”正確”で時間厳守を、そして”確認”では納品の時一つ一つ品物を手にとって確認する-これらは老舗ならではの商売哲学だと思いますね。
インタビュアー
なるほど。これこそ商売の原点でしょうな。
会長
お陰様で、私どもは口コミでお買いあげ下さるお客様が多いのですよ。仏壇は1度お買いになれば、60年や70年はもつ品物ですが、それだけにお買いになった満足度が店の評価を左右するわけです。

当社では無理に高価な品物をお勧めすることはございませんし、アフターサービスには万全を期し、修理も無料に近い形でさせて頂いておりまして。このようなサービスは、一流メーカーさんの製品だからこそできる技なのです。

インタビュアー
メーカーさんのエリアは。
会長
全国レベルで考えております。そもそも高知県内で仏壇を作っている所はございませんので。それで、大量に仕入れることによってコストダウンを図れるよう、5年前から年に1回ずつ”産地直売会”と”全国仏壇フェア”というイベントを行っておりますが、来年の開催日をお客様がいらっしゃる程。回を重ねるごとに実績を上げております。
インタビュアー
それは合理的ですね。
会長
ええ。輸送コストにつきましても、商品が多い方が効率がよく、営業マンはイベントの時期に合わせて注文を取るなど工夫しております。
インタビュアー
仏壇屋さんで営業担当の方がいらっしゃる所というのは、少ない様な印象を受けますが。
会長
そうでしょうね。営業マンは、55年に出店第1号の安芸店がオープンする際、初めて採用したのですが、当時としては業界初の試みでした。実は、これは私のアイデアでして、その数年前から「これからは仏具店も店外でセールスする時代になるのでは」と考えておりましたノウハウを、出店のオープンを期に実行してみた次第で。幸いにも、このシステムが軌道に乗り、今では出店も5店舗に増えました。
インタビュアー
伝統的な老舗の経営理念と社長の現代感覚とがうまくドッキングされ、実を結んだのですね。
会長
ただ、私はどんなに合理的・積極的ノウハウを採り入れましても、先程申しましたとおり、真心だけは忘れないよう、30名の従業員にも徹底させております。朝礼では、信仰心を養い、仏教の知識を広めるために全員で読経。

また、宗派によって仏壇のお祀りの方法が異なりますので、従業員全員が各宗派の仕事について知識を身につけ、お客様に責任をもってアドバイスできるよう、各宗派の著名なご住職をお招きして勉強会を開いています。

インタビュアー
ほう。忙しい中、大変ですなあ。
会長
でも、皆熱心に取り組んでくれているのですよ。自主的に研修会を開くこともあるくらいですから。経営者としてはうれしい限りでして、少しでも多く報いてやりたいという気持ちになりますね。ですから各々の誕生日も休暇にして、忘年会の代わりに食事会を3ヶ月に1回設けるなど福利厚生面も重視。そのかいあって、従業員の定着率も非常に高く、皆優秀な実績を納めてくれていますよ。
インタビュアー
全く、企業としての一つの理想的な形と感服致します。では、最後になりますが、社長の夢をお聞かせ願えますか。
会長
まず、なるべく早い時期に店舗をもう少し増やすこと。そして、従業員の労働条件・福利厚生を更に充実させたいと思っております。例えば同窓会などの席上で、「乾仏具店に勤めている」と言ったときに、「ああ、良い企業だね」と反応が返ってくる様な。そうして3代目としての責任を果たしましたら、息子に跡を譲ろうかと考えておりまして。
インタビュアー
社長の誠意と熱意で、今後ますます発展されるようお祈りいたします。