老舗 乾佛具店

社長インタビュー

お客様を思い、社員を思う心
「感謝の気持ち」を受け継いで85年。
社長

地域が必要とする企業に

大正十年創業で、県内でも屈指の歴史を誇る乾佛具店。感謝の気持ちを大切にすることと、良い商品の提供によって培ってきた「信用、信頼」を基に、「お客さま思い、社員思い」の姿勢を貫いている。

四代目・乾貴昭社長に、会社の理念、今後の事業展開、目指すべき会社像などについて話を聞いた。

良い商人になれ

インタビュアー
乾佛具店はもうすぐ創業八十五年を迎えますが、創業時の考え方で現在も生かされているものはありますか。
社長
二代目社長・故乾一重の教えで「良い商人になれ」というものがあります。「良い商人」とは「より誠実に、より正確に、より確認を」を実行する者の事で、そうした道徳心を大事にしていれば、必ず認められる店になるという考えです。朝礼で社員に唱和させています。
インタビュアー
二代目の教えは、今でも生きているのですね。
社長
そうした先祖のまいた種が今やっと信用、信頼という実に結び付いたと思っています。今日、こうして商売ができるのは親のおかげ、祖先のおかげ、社員のおかげ、お客さまのおかげです。ですから社員にも、「親、祖先に感謝しなさい」と常に言っています。
インタビュアー
そうした「心」についての社員教育も、力を入れていますね。
社長
私もまだまだ若いので、社員と共に学んでいるところですが、私たちの仕事は、神具仏具を扱っている訳ですから、やはり売る側にも祖先への感謝の気持ちがないと、うわべだけの接客になってしまいます。

また、すべてのお客さまが手を合わせる対象となる商品ですから、気持ちを込めて、小さな商品でも両手で持つように指導しています。良い商品と良い店構えに、心のこもった接客が加われば、他社との大きな差別化となり、大きな武器になりますから。

インタビュアー
社員の方と接する上で、注意していることはありますか。
社長
社員を管理することではなく信頼することと、できるだけ風通しを良くすることで、社員が意見を言いやすい環境づくりが大切です。トップダウン方式では経営者の能力以上のものは出ませんが、ボトムアップ方式なら社員の力によって大きな可能性を秘めています。
インタビュアー
最近は、家庭で先祖に手を合わせる習慣も廃れてきています。
社長
昔は大家族で、おじいさん、おばあさん、の姿を見て自然に身に付いたものが、核家族化によって徹底できなくなっています。ただ、感謝する気持ちは、先祖に向けるだけのものではありません。

私は食事を食べる際にも、手を合わせているのですが、命をいただく動植物に対しての感謝の気持ちです。そのように、日々感謝する気持ちを持つことが、心のゆとりにもつながると思います。

商品の質を追求

インタビュアー
仏壇を置く家庭も少なくなっていますね。
社長
ライフスタイルの変化によって、最近の家は仏間がないものが主流になってきました。ですから、そうした変化に合わせて、お仏壇も進化しています。例えば、フローリングの洋間に、従来の重厚なお仏壇を置いたらどうでしょう。すごく違和感がありますよね。ですから、そうした部屋のバランスを壊さないようできたものが「現代仏壇」と呼ばれるものです。
インタビュアー
「現代仏壇」とはどのようなものですか。
社長
最近は黒丹系の色から明るい色のブラウン系が主流となり、デザインもシンプルなものが増えています。また、幅、奥行きとも小さめで場所を取りません。

お買い上げいただくのは、若い方や女性が多いのですが、ここ十年ほどで需要が急増し、現在ではマンションや洋風の家で仏壇を置いている家庭の七割ぐらいは、「現代仏壇」ではないでしょうか。当社でも従来のお仏壇と共に、「現代仏壇」の品ぞろえも充実させています。

インタビュアー
近年は仏具店も競争が厳しくなっているようですね。
社長
今は、中国やインドネシアなどで作られた仏壇がよく出回っております。確かにそうした安いものも必要かもしれませんが、当社は安さを追求するだけではなく「売れるお仏壇は何か」という品質を求めています。

「乾佛具店にしか作れない」商品を前面に打ち出すために、徳島工場を建設し、オリジナルのもので良い商品を提供し続けたいと考えています。そうすることが、お客さまの信用、信頼にもつながるのだと考えています。

信用、信頼大切に

インタビュアー
愛媛、徳島両県に出店するなど、積極的な事業展開も目立っています。
社長
高速道路の整備によって、近い将来、大手の仏具店が高知にも進出してくるでしょう。そうなる前に、こちらが大手の実力、体力を付けておこうというのが県外出店の狙いです。それに、こうした試みは私たちにとっても良い勉強になります。

県民性の違う地域に出ていくことで、商売の仕方に悩み、苦しむことも多いですが、そうしたことが将来きっと役に立ちます。四国、そして日本で認められる企業になるため、常に前向きに進んでいきたいと思っております。

インタビュアー
最後に今後の抱負を聞かせてください。
社長
お客さまと、地域に必要とされる会社になることがこれからの目標ですね。そのためには、地域に貢献する活動も大切になります。今の子供は安心して、自由に遊び学校で学ぶことができなくなっています。また、お年寄り用の介護施設の整備も十分ではありません。

こうした、教育、福祉の問題に対しても、会社として支援できることがないかを探っていきたいです。そして、何より大切なのは、先祖から受け継いだお客さまからの「信用、信頼」を大切に引き継ぎ、次の代へ伝えていくことが私の務めだと思っています。

インタビュアー
きょうはお忙しい中、本当にありがとうございました。

2004年(平成16年)10月29日 高知新聞 朝刊より